吉田智輝Yoshida Satokiさんが、世界でまだ誰も達成したことのない「歩いて海抜ゼロメートルから七大陸最高峰の頂に 登る冒険」に挑んでいます。現在、目標の半分を超すところまできました。 
           
           吉田さんは埼玉県鴻巣市出身、28歳。2016年早稲田大学修士課程修了後、アメリカに本拠を置く金融グループのゴールドマン・サックスに就職、シンガポールで会社員生活を始めました。 
           吉田さんは子どもの頃から自然が好きで、学生時代にはアフリカ最高峰のキリマンジャロの登頂を体験しました。このときはいわゆる麓あたりから登るふつうの登山でしたが、その後思い立って海辺から山頂まですべてを自分の足で踏破したい、それも世界七大陸すべてての最高峰といわれる山を制覇したいと大きな夢を抱くようになりました。 
           
          ・ セブンサミッツ Seven Summits とは 
           セブンサミッツとは、七つの大陸にあるそれぞれ最も標高が高い山の総称です。ただし、測定方法により多少の違いが見られています。。 
          
            
 
                  
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   大陸 
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   国 
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   山 
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   高さ 
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   海からの距離/所要日数 
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   アジア 
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   ネパール/中国 
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   エヴェレスト 
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   8848m 
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   1000km+高さ/90日 
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   ヨーロッパ 
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   ロシア 
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   エルブルース 
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   5642m 
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   611km+高さ/21日 
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   アフリカ 
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   タンザニア 
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   キリマンジャロ 
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   5892m 
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   466km+高さ/17日 
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   北アメリカ 
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   アラスカ 
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   デナリ 
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   6194m 
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   300km+高さ/45日 
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   南アメリカ 
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   アルゼンチン 
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   アコンカグア 
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   6962m 
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   250km+高さ/30日 
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   オーストラリア 
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   オーストラリア 
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   コジオスコ 
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   2228m 
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   218km+高さ/6日 
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   南極 
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   ビンソンマシフ 
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   4892m 
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   600km+高さ/60日 
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          ・ Sea To Summits から Sea To Seven Summits プロジェクトへ 
           海抜ゼロメートル地点から最高峰を目指す登山をSea To Summitといいます。オーストラリアの登山家Tim McCartney Snape氏が、1990年、インド•ベンガル湾からスタートし、1200kmを歩き続け、そのままエベレスト山頂に至ったことから始まりました。それまでになかった新しい登山のあり方に、世界中から注目が集まりました。 
           
           ヨーロッパ最高峰エルブルース(5642m)の登山ルートは、通常ですと5000m地点までリフトと雪上車で登り、そこから先を歩いて登ります。しかし、吉田さんは、「それは自分のしたい登山とはちがう!」と感じました。 
           
          ・ 登山はルールもなく競争もない世界 
            登り方は自由、千差万別、干渉も無意味。吉田さんは、そこに正しい方法や決まりなどないからこそ、自分なりの登山をしてみたいと思うようになりました。ならば、自分なりの登り方を極め、世界でまだ誰も達成していない、海抜ゼロメートルから+七大陸最高峰登頂という冒険を成し遂げたい!と、この一大プロジェクトにコミットする決意をしました。 
           葛飾北斎の右の浮世絵のようなイメージがぴったりくるでしょうか。 
           
          ・ Sea To Summits プロジェクト中間報告会 
           2019年4月11日、日本外国特派員協会(千代田区丸の内)において、吉田さんによる報告会が開かれました。そのすぐ直前の2月6日にプロジェクト第4弾、南米最高峰アルゼンチンのアコンカグア山(6962m)登頂を果たしたばかりでした。 
           
                     
                     
                 (写真左から筆者、吉田智輝さん、作曲家・鍋島佳緒里さん、世話役の木方元治さん) 
           
           当日は朝8時からAsa-kai:Breakfast meetingの形で行われましたので、朝8時までに丸の内に行くのがとにかく大変でした(‘;’)。報告会は木方元治Kiho
Yukihiroさんが世話役となって漕ぎ着けました。facebook愉快の会の親分・古屋力さんを含め仲間も大勢駆けつけました。そんななか、吉田さんはプロジェクトの報告を熱い思いを込めてすべて英語で行いました。 
           
          ・ なぜ過酷な登山に挑戦するのか? 
           筆者のような本格的な登山経験のない者にとっては、なぜそこまでして危険な山登りをするのかという素朴な疑問がどうしても拭えません。 
           これに対して、「そこに山があるからだ」という有名な言葉があります。これは、イギリスの登山家、ジョージ・ハーバート・リー・マロリーGeorge Herbert Leigh Mallory(1886 - 1924年)がNew York Timesの記事に残したもので、「なぜ、あなたはエベレストに登りたいのか?」と問われ「そこにエベレストがあるから “Because it's there.”」と答えたといいます。マロリーのいう「山」とは、観念的な意味の山ではなく、具体的に「実在する山」つまりエベレストを指しているのです。 
           
           吉田さんは、「それが私のものとしてそこにあるので…(極めて個人的なもので)チャリティというようなものではありません。“Because it's there as mine. Not as a
charity.”」と語ります。 
           また、吉田さんの冒険を後押しした出来事が2018年の夏、インドのガンジス川を泳いで渡ろうとしているときに起きました。深い川を目の前にし、逡巡していたときインド人に投げ掛けられたつぎのひと言が胸に響いたといいます。 
           「なぜ、君は今すぐやりたいことをしないのか? 日本人は、本当にしたいと思うことを先延ばしにしたがる。君は、いつ死んでしまうか分からないのに。」  
           “Why don’t you do what you want to do now? Japanese people tend to postpone
what they really want to do. You
don’t know when you pass away.” 
           
           禅に「只管打坐」(しかんたざ)という言葉があります。余念を交えず、ただひたすら座禅することです。「只管」はひたすら、ただ一筋に一つのことに専念すること、「打坐」は座ること、座禅をすることです。吉田さんは、この言葉に触発され、冒険への情熱を途切らせることなく、山登りに打ち込むことを決心し、「只管打登」という言葉を思いつきました。 
           
          ・ クラウドファンディング 
           登山それも海外遠征となると相当な資金が必要です。吉田さんは、プロジェクトの3回目までは自費で賄いましたが、その後は“Readyfor”(※)のクラウドファンディングを利用することにしました。これは、インターネット上で自分の活動や夢を発信し、それに共感した人や応援したい人を募り、資金を集める新しい仕組みです。吉田さんのプロジェクトの目標は50万円でしたが、92.2万円が集まりました。 
           
          ・ 四つの山を制覇するもいまだ道半ば 
           七大陸の最高峰のうち最も低いオーストラリアのコジオスコ登頂(2018年9月)を皮切りに、2019年2月までにヨーロッパ大陸エルブルース、アフリカ大陸キリマンジャロ、南アメリカ大陸アコンカグアまで四つの登頂を果たしました。ようやくプロジェクトも折り返し地点を超しました。 
           
                
           
           ところで高い山では、酸素量が極めて希薄なため何の装備もなしでは非常に危険です。8000mを超える高度をデス・ゾーンと呼びますが、エベレスト山頂は8848mまさにデス・ゾーンです。 
           通常であれば時間を掛けて高知順応などをしながら登ってゆけますが、デス・ゾーンでは、どんなことをしても人体が順応することはできないといいます。酸素補給なしにデス・ゾーンに長期滞在すれば、身体機能の低下、意識の喪失、そして最後は死に至る危険性があるのです。 
           
          ・ 登山にはさまざまな魅力がある 
            山に登れば、下界では目にすることができない絶景や自然の美しさ、行く先々での人々との出会いや触れ合いがあります。最後に吉田さんの思いを記して終りとします。 
           
           「観光では訪れないような田舎道をひたすら地道に歩いて走って進みます。山だけをキリトルのではなく、山から海に繋がる自然の循環を感じ、山周辺の文化を丸ごと味合うことができるSea To Summit登山。現地の飲み物/食べ物を借り、寝床を借り、山も道も借り冒険をさせてもらっているのです。」 
           
           若き冒険家吉田智輝さんの夢が実現されんことをお祈り致します。 
           
           
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